第6話 嘘

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どこまで行く気だろう。 もう随分歩いた。 玉城は雑草と木々の間の小道を縫うように歩きながら、少し不安になってきた。 自分はただこいつの気まぐれな散歩に付き合わされているだけなのだろうか、と。 たぶん、開発計画が途中で止まってしまっている場所なのだろう。 繁華街からそんなに離れていないと言うのに、その一帯は広範囲に渡って人の手が入っていない雑木林だった。 しかし、この景色は何処かで見た覚えがある。 玉城は、遙か前方を何の躊躇いもなく道を選択して歩くリクの背中を見つめながら考えた。 もう、新緑の季節だというのにここの白茶けた木々はまるで冬の林のように葉を付けていない。 病気か害虫のせいで枯れてしまっているのだろう。 一見何処にでもある雑木林。 けれど、街から遠く離れていないために、鉄塔やビルの一部が、その枯れ木の間に見え隠れする。 そのアングルも見覚えがある。 この景色は・・・。 柔らかそうな土が微かに盛り上がっている一角でリクは足を止めた。 ……そうだ、思い出した。 玉城は静かに太めの枯れ木に身を隠した。 ……あの絵の背景の雑木林だ。 一つパズルのピースがはまったような気がしたが、玉城にはその先が読めない。 何か意味のある絵が浮かんでくるのだろうか。 リクは少し警戒するように辺りをキョロキョロ見渡した後、すぐ近くの木にそっと立てかけてあった、錆びの浮いた小さなショベルを手に取った。 前回来たときに置いて帰った、と言う感じだ。 ショベルを持ったまま彼は足元の少し盛り上がったやわらかい腐葉土を見おろした。 “何をするつもりだろう” 玉城は息を殺してじっと見据える。 リクは玉城に気づく様子もなく、ゆっくりとショベルでその土を掘り始めた。 そこは以前に深く堀進められていたのだろう。朽ちた枯れ葉が乗せてあるだけで、青年の手によって難なく50センチくらいはすぐに掘り返された。 けれど更に掘り進めようとしたショベルの先で、土がガッと硬い音を立てた。 ビクリと一瞬動きを止めたが、リクはそのまま更に勢いをつけて土を掘り返し始めた。 穴を掘るのが目的というよりも、その先にあるものを求めているという感じだ。
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