だから死んでくださいと言ったのに

「さて、それでは状況を確認しましょうか。

　現在得点は０対０。

　そしていまは９回裏。攻撃はわがチーム。

　ここで１点でも取ればサヨナラ勝ち。

　逆に１点も取れなければ延長。しかし表の守備が終わったときにピッチャーは肩の限界を訴えており、控えのピッチャーはあと２人いるけれど、その２人では相手チームの打線を抑えられない。

　つまり絶対に、この攻撃で点を取らなければわがチームの勝利はない。

　グラウンドを見れば、ランナーは１塁。アウトはなし。

　繰り返しますが、１点で勝てるのです。

　ならばこの場面は生きようと考えるところではない。死ぬ気で臨む場面です。次が好調の１番ですから、なおさら。

　だからあなたは死んでくださいと送りだしたのに、打つ気満々で空振りしたあのボケ、いえ、あの人に、あなたがここですべきはバントですと、そう伝えてきてください。

　それでは、伝令行って来い！」