遺書

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私は後ろを見ない。 見てはいけない気がした。 ふと、遺書の冒頭を思い出す。 「この時代の私は全てにおいて、正しいと押し付けられることを否定しながら生きてきた。 自分が忠告されたこと、注意されたこと、全てを聞いたつもりでいただろうが、自分の意志を持ちたかったのだろう」 仕事においてだろうか? 恋愛についてだろうか? それとも別の何かだろうか? この遺書は何をもってしたためられたのか。 送付者、作者は何を考えているのか。 私はまだ明るく暖かい昼間に急いで家に帰ろうと走る。 外を歩くカップル、家族、気にせず帰る。 笑えるほど置いてきた亮介ヘの罪悪感は一切なかった。
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