1人が本棚に入れています
本棚に追加
躊躇いながらも春が口を開く。
「あのな…今日から一週間ここに泊めてくれ!」
「はぁ??」
突然の春の頼みに当然だが奈津希の心臓は跳ね上がり頭は真っ白になる。目を白黒させながら春を見ていると春がベッドからおりて奈津希の手をぎゅっと握った。春の行動は余計に奈津希を混乱させる。
「お願いだ。奈津!一週間だけでいいから!こんなこと頼めるの奈津だけなんだよ。食費とか生活費は出すから心配しなくていい。」
奈津希だけ。その言葉に春はずるいと奈津希は思った。奈津希がこう言われたら断れないのを春は知っている。幼馴染だからこそ使える技というかなんというか。奈津希は春の目をしばらく見つめてはぁとため息をついた。
「いいよ。春くんだったら。でも..お金はいらない。一週間だけだったら一人ぐらい増えたって変わんないし春くんからもらえないよ。」
まるでご褒美をもらった子供みたいに春は笑った。あからさまに嬉しそうな顔しなくても…。そんなことを思いながらも奈津希の気分が上がっているのは確かだ。春がいれば奈津希は自然に楽しくなる。春は握った手をもう一度ぎゅっと握る。
「ありがとうな。奈津。でも金は払う。タダで置いてもらうわけにはいかないからな。俺も払ったほうが気が楽なんだよ。」
「んー…じゃあ必要最低限ね。それ以上は受け取らない。」
どうせ泊まるんだったら春には快適に過ごしてもらいたい。
「あぁ。わかった。ありがとう!奈津」
「わっ!はっ春くん??」
春が握った手を引き寄せて奈津希の体を抱きしめた。心臓がうるさい。春に聞こえていないか奈津希は不安になった。幼馴染に抱きしめられてドキドキしてるなんて恥ずかしすぎて春にばれたくない。奈津希がどうしようかと悩んでいると聞き慣れた着信音が鳴った。
「春くん!俺電話!」
離してと春の肩をたたく。春はすんなりと奈津希の体を離した。奈津希が投げ捨ててあった携帯をとって台所の方に移動しようとその場を動いた。
「……だ.….づ…..…」
「え?」
春がぼそぼそと何か言ったのを奈津希は聞き取れなくて春を見た。春は笑顔で早く出ろよと電話を指差す。奈津希は頷いて春から一番遠い台所の方に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!