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とにかくだ。学年一かわいい彼女は変わり者らしい。しかしそこがまたいいのだと、クラスの連中は今日も今日とて彼女のハートを狙っていた。
B「ハンっ。バカなやつらめが」
どんな男に言い寄られても、彼女はいつもすまし顔。全く相手にされていないというのに。俺の冷めた様子に、そろそろ女に興味を持てよ、そう言われたのも記憶に浅い。が、俺からすれば余計な世話だ。俺にはちゃんと家に帰ればマイハニーが待っているのだから。
B「待ってろよ。今すぐ帰って遊んでやるからなぁ」
いやむしろ待ちきれないのは俺の方だ。俺は鞄に詰め込んだマイハニーのプラモをいそいそと取り出し――、ない。ないぞ。しまった、授業中にあの愛らしい姿を眺めて、机に入れっぱなしだったのを忘れていた。俺の愛しの琴電プラモ。ミニサイズだが、それがまたかわいいのだ。誰かに奪われはしないだろうか。無抵抗なハニーはきっと不安がっているに違いない、俺は慌てて教室へと引き返した。
B「誰だっ?」
もうとっくに授業が終わった時刻だ。逆光で少し見えにくいが、誰もいないはずの窓際にたたずむシルエット、あれは――。
B「学年一かわいい変わり者?」
まさか、俺の琴電を狙っ……いや、そんなはずはない。彼女は変わっているだけで、悪い奴では決してない。はず。少々、話しかけてもスルーされることが多くて、人の話を聞いているのかと疑ってしまうほど意味不明な返答が返ってくることも多いが。それはおそらく、彼女もまとわりつく男共に嫌気がさしているとか、きっとそんなところだろう。何にせよ琴電は彼女の前の机の中だ。ここは動揺を隠し、あえて普通に話しかけよう。
B「なんだ、まだいたのか? とっくに終了のチャイムなり終わったぞ」
A「…………」
またシカトか。まったく、かわいいからとお高くとまって。同じ女子から遠巻きにされるわけだ。これだから女はかわいくない。俺はじっと見つめてくる彼女に曖昧な笑みを浮かべながら、琴電まで足を動かす。
A「……なに?」
B「は? なにが」
あと机二つ分の距離で、彼女が珍しく話しかけてきた。だがやはり意味不明だ。ナニとはなんだ。透かさず俺が聞き返すと、彼女はかわいく首を傾げた。
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