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「わたしは十二年後のきみだ。宇宙人だと思うのなら、それも間違ってはいない。地球人だって、宇宙の一員だからだ。……そうだ、むだな時間を使ってはいられないんだ。悪いんだが、質問はこれくらいにしてくれ。わたしはこちらの世界に、十分ジャストしかいられないんだ」
気味が悪かった。
見てくれは明らかに宇宙人なのに、声は彼の言うとおり俺にそっくりなのだ。
「手短に説明しよう。その後、きみにお願いがある」
信じたくはないが、宇宙人の姿の俺、が言った。
「わたしは大学を卒業して中堅の商社に勤めた後、独立して企業した。業種は出版社だ。これが大成功した。友人の漫画家を起用した少年漫画雑誌を創刊して、爆発的に売れたからだ。その他にも、自然食品の会社やプログラムソフトの製作会社なども立ち上げ、わたしは、つまりきみは大金持ちになったんだ。その頃、人類は突然変異を起こして急激な進化を遂げた。その原因を詳しく説明している時間はない。なんせ、あと八分くらいでわたしは十二年後に帰らなくてはならないからね」
早口で十二年後の俺は言った。
俺は突然変異とやらで、こんな姿になってしまうのか。イヤだ、と思った。
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