第1章

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 そんな相手を、塩冶の母親は今も庇って応援していた。だからこそ、母親は、何をしても応援してくれるものだと、勝手に信じていたらしい。 「母さん、怒ってはいなかった。でも、自転車の件は本当だった。征爾さんにプレゼントしていた」  えんきり屋の赤い防音室。そこに俺が居ると、塩冶は琥王に知らせていた。琥王は、着替えの途中のような恰好で、部屋に走り込んできた。 「二人きりはダメ。それから、塩冶さん、薬師神に方法は教えないで」  何の方法のことだろうか。 「はいはい」  塩冶の母親は、有名な教祖で、それが怖いのか塩冶に近寄る人間は少ない。 「他にも相手がいるのだけど、母さん、殺してゆくつもりかな…」  怖い事を言う。 「その前に、子供を作ったらいいでしょう」  真面目に回答したのだが、どうも的は外していたようだった。 「【返還の血】だっけ、それで造ってもいいのかな」  それでは、世界が崩壊しそうであった。 「勘弁してください。あえて聞きませんでしたが、制御できないのですか?」  琥王も、厄病神を制御できないでいる。厄病神は俺が怖いのか、俺がいるとなりを潜める。 「桐生にスパルタされていてね。かなり制御ができるようになった。もう死者の甦りはないよ」  俺も、何度も世界と通信したくはない。これは、本当に寿命が縮むのだ。この場合の縮むは、生きた心地がしないほうだ。気を抜くと、全てを世界が終わりにする。  俺は、本当に世界を滅ぼすのかもしれない。そんな予感がしていた。 『あげる』了
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