壊れたオルゴール

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この街は少しおかしい。 何がって? ・・・挙げればキリがないんだが、今話すとすれば「壊れたオルゴール」かな。 朝の5時と夕方17時。 今の季節なら夜明けと夕方ぐらいか。 何処からともなくオルゴールの音色が聞こえてくるんだ。 曲は分からない。 聞いたことがある気もするし、似ている別の曲のような気もする。 ハッキリしろって? 分からないんだよ。壊れてるから。 音は所々飛び、音色は歪み、遠く離れた学校のチャイムの様に淡く響くんだ。 ちなみに、この「壊れたオルゴール」はこの街の人間なら誰でも知ってる『はず』だ。 確認はしていないのか、だって? できないんだよ。 そんな音は誰も認めたくないんだ。 誰かに確認を取らない限り、それは自分の勘違いで『済ませられる』。 でも現実に皆聞こえているんだろう、だって? そう。大人は既に『知る事の怖さ』を知っているけど、僕達はまだ子供だ。 知る事こそが生きる理由でも何ら間違っていない存在だ。 だから僕達は調べた。 夏休みに、冬休みに、春休みに。 小学校で、中学校で、そして高校でもそうする。 でも『無かった』。 音は『有る』。でも音の発信源は『無い』。 『分らない』ではない。『無い』んだ。 ふふ、信じていないだろう? 顔を見れば分かるさ。 おっとそろそろ17時だ。 学校のチャイムが同時に鳴るから聞き取りにくいけど、耳を澄ましてごらん? ーーーーーーーー 聞こえただろう? この街では必ず5時と17時に至る所でチャイムが鳴るんだ。 不安が濁るからね。 勿論、これで問題は解決している。誰も悪い思いはしていないからね。 チャイムのお陰で朝早くに目覚める事が出来るし。大概の会社は17時で仕事が終わる。 納得していない顔だね。 僕もだ。 まぁ僕達の第一歩にしては良いと思うよ? 昔の様に、君は前に。 僕は影に着いて行く。
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