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階段を上がり、通された部屋は誰かの私室らしかった。
部屋の中央には本の置かれたローテーブルといくつも本が積んであるソファー。壁際には本棚。窓の前にはアンティークブラウンのデスクがあり、そこにも大量に本が積んである。この部屋に来る途中の廊下にも本があふれていたが、どうやら原因はこの部屋の主のようだ。それがすぐ分かるくらい、部屋中に本が積んである。
「ああ、そうそうこれ。皆で食べてー」
「いつもありがとうございます」
中澤がケーキを差し出し、藍がそれを受け取った瞬間、部屋のドアが勢いよく開いた。何事かと振り返ると、二人の少女が入ってきた。誰かを捕まえているのか、二人の間には人ひとり分のスペースが空いている。次いでジタバタと床を蹴る音も聞こえた。
藍が呆れたようにため息をつく。
「ミヤビ、いい加減にしないか。中澤さんに失礼だろ」
藍の言葉に、ミヤビと呼ばれたその人はピタリと動きを止めたようだった。好奇心に負け、藍の肩越しに河田は相手を覗き見る。
二人の少女に挟まれたその人は、かなり細身だった。
腰までくる黒髪はかなり適当に結ばれてる上に、今まで暴れていたせいかボサボサで、前髪で顔の上半分が覆われてしまっているため表情は上手く読めない。前髪の下から辛うじて見える黒縁の無骨なメガネが特徴的だ。服には頓着していないのか、サイズが全然合っていない。大分大きめのものを着ているようで、袖に手が隠れてしまっている。
その外見からは、年齢はおろか性別さえ良く分からなかった。
次に河田は、ミヤビを連れてきた二人の少女を見る。
一人はストレートの髪をポニーテールにして、ややボーイッシュな服装。
もう一人は緩くウェーブする髪を横で軽くまとめ、大人しそうな服装。
共に十代後半から二十歳前後に見える。雰囲気がどことなく似ているので、姉妹か……双子かもしれない。
二人は河田に気付かなかったようで、ソファーですっかり寛いでいる中澤に視線を向けた。
「中澤さん、こんにちは!」
「こんにちわですー」
「二人ともこんちー。いつもありがとね~」
ハタハタと手を振る中澤に、二人はにっこり笑った。どうやら、河田以外の人間は大分気心の知れた仲らしい。
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