寝顔に挑む

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 日曜日の午後だった。 「家の鍵忘れちゃった。時間つぶさせて」  と言うなり、ミホはローファーを脱ぎ、俺の返事を待たず上がりこんできた。三十分前のことである。  家族はそれぞれの用事で出払っていた。おまけに、全員帰りが遅くなるらしい。つまり、この家にいるのは、俺と二つ年上で幼なじみのミホのみ。  だというのに、ミホのやつはソファで寝転がっていた。口をだらしなく開け、すーすーと寝息を立てて。緊張感も警戒心もない。制服のスカートから覗く太ももに視線を奪われながら、小五の俺は男と思われてないのか、とむかついた。ちょっとぐらい身の危険を感じろよな。 「起きろよ。風邪引くぞ」  テニス部の練習帰りで疲れているせいか、ミホはぜんぜん起きなかった。体を揺すってもダメ。手をとめ、彼女の寝顔をまじまじと見つめた。冒険、という文字が頭に浮かぶ。  俺は油性ペンのフタをとり、ミホの顔に近づけた。
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