我が名はタナー

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そうだ、民はおらぬのか? 辺りに民は…… おるではないか。 だがしかし、言葉が通じるかは分からぬ…… おや、これはどういうことだ? 民が貴族のような黒服に襟巻きのような細い紐を巻いているではないか。 いや、貴族なのかもしれぬ。 だがしかし、従者も引き連れず、なおかつ歩いているとはどういうことなのだ? ぬ、他にも民がおるではないか。 ……なんだ、あの服装は。 妙齢のおなごが足を人前で晒して、みっともない。主人となる者はおらんのか。主人以外へ肉体を見せ付けるなど、この国の女はなっとらんな。 「何々、あれレイヤー?」 「え、なんのコスかな?」 「うわ、遅刻じゃん。急ご!」 おや、女共の話す言語は我らの国と同じではないか。 しかし、レイヤーやコスとは何だ。 方言のようなものか? 話し方も奇妙だ。 しかし、鎧を着る兵士はおらぬのか。 この国は無防備にも程があるだろう。 巡回する兵士すらおらぬとは、それ程までに平和という証なのか? いやはや、我には理解出来ぬ国だ。 いかん、それより早急に国へ帰り王を助けねば。 まずはこの地を知らねば動かぬな。 仕方ない、民に国王の居城を聞くとするか。
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