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王は言った。
「君達は、いかに自分が暴力的で自己中心的か分かっているのか?」
王政に納得の行かなくなった市民は武器を手に城へ乗り込んだのだった。最初は農具や調理器具を手に、倒した兵の武器や装備は全て略奪し、戦力を拡大していった。
次々と兵をなぎ倒す市民はついに王の下まで辿り着いた。
それなのに王は逃げることもなく、玉座に座したままワインを片手に続ける。
「今までこの惨めな戦いを起こすために何人の兵を殺した?
そいつにも生活はあった、お前らと同じように。貴様らは自分の生活を楽にするために人を殺したのだ。屍の上を平気で歩くのが貴様らだ」
市民はその王の余裕ぶった姿ですら気に食わない様子で、中でも白い髭を蓄えたシワの目立つ者が一歩前に出た。
「王様、貴方様の政治には理解しかねる。ここにいる者は皆、苦しんで苦しんで、そして立ち上がったのだ。
よいですかな、貴方の時代はもう終わりなのです。この国は変わる時なのです」
大仰に手を広げて言い放つと、後ろの者たちがお互いを鼓舞するように大きな声をあげ、そして髭の男の言葉を讃えた。
天へと武器が突き上げられる。
「王様、貴方は我々が身柄を確保させていただきますぞ。そのあとの処罰は皆と話し合って決めることととします」
髭の男は顎を撫でると、若く屈強そうな男に縄で括るよう指示を出した。
王はワイングラスを玉座の後ろへと放り投げると、大きく溜息をついた。
パリンと後ろでグラスが割れる。
「貴様ら、哀れよのぉ」
王は蔑むように言い、そしてそれは縄を持つ男の怒号で掻き消された。
王政は、崩壊したのだった。
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