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信号が青に変わって車はゆっくりと走り出す。
「お前、元カレがブログやってるのを知ってたか?」
「はい。最近は見てないですけど」
「新しい彼女と遊園地に出掛けてる画像がアップされててな。ジェットコースターに二人で乗ってた」
「それって。妊娠は嘘だったってことですか?」
「だろうな。彼女の全身の写真もあったが、ピンヒールにミニスカート。お腹に赤ん坊がいたらあんな高いヒールは履けんだろうな普通」
そうか。私は酷い嘘に騙されていた。新しい命なんてでっち上げで、それをネタに指輪までも取り返そうなんて。酷い男だ。なんで気がつかなかったんだろう。今更ながら恥ずかしい。
クルマはインターチェンジのゲートをくぐった。キツいカーブに身体は揺れる。合流車線から本線に滑り込む。
こんな指輪。
私は助手席の窓を開けた。猛烈な風が顔に当たるけど、そんなものに負けじと指輪を外に放り投げた。
キラリ。太陽の日差しを浴びて光るそれは一瞬で見えなくなった。運転席の所長は大笑いしていた。
*-*-*
半年後。今日、私は結婚する。
いや、正確にいうと挙式した。籍はあの旅行の2ヶ月後だった。というのも、あの日、どうやら命中したらしく、私のお腹には新しい命が宿っている。新婚早々オアズケか?、と所長はふてくされているけど仕方ない。
元カレは新しい彼女とはすぐに別れてしまったらしい。なんでも彼女に好きな人ができたとかで。ザマーミロ、なんて思ったりもしたけど、ほんの少し、私が待ってたらどうなってたかな?なんて考えたりするのは所長には内緒だ。
シリアルナンバー付きの指輪はそれゆえに彼の手元に戻ってきたらしい。高速道路の清掃係のスタッフが落とし主の人生一大事だと思って親切心から届け出たからだ。元カレはそれを売り払って新しい女を引っ掛けるべく、夜な夜な出歩いてるようだった。
「生涯、愛することを誓いますか」
「誓います」
私に一目惚れした理由はまだ聞いてない。でも私を一番に好きで一番に大切にしてくれているのは伝わるから、それでいい。
厳かな教会、皆の前で誓いのキスを交わした。
(おわり)

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