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「くそっ」
カオルの唯一の武器である、先がハート型になっているステッキは、振り回された時に落としてしまっていた。
カオルは触手を両手で掴み、ちぎろうとする。しかし、力を入れたとたん植物の粘液で滑ってしまった。何度かチャレンジするが、全くうまくいかない。それどころか、触手に両腕を取られ、バンザイをする形で縛り上げられてしまい、ついには身動きが出来なくなってしまった。
触手が足を片方ずつ掴み、左右に広げる。服の中の触手も大胆に動き出し、そのせいで、上着が胸のすぐ下まで大きく捲れ上がってしまった。
「ちょ、やめ」
触手はカボチャパンツの中にまで入り、それをジリジリとズリ下げ始める。
「うおおおおおお。そこはマジでやめろ!」
今すぐにでも、この触手から抜け出さなければならない。
さもなければ、とんでもないことに。
その時を想像して、カオルはゾッとした。
残る刃は己の歯のみだが、さすがにこのヌルヌルの触手に噛み付きたくはない。
「つーか、助けろよ! このバカネズミ!」
カオルは地面の上をウロチョロする白い動物に怒鳴った。
動物は長い胴体と短い手足、細長い尻尾を持ち、器用に後ろ脚だけで立ち上がり、前足でカメラを掴んでいた。背中には小さなリュックを背負っている。
「ボクはネズミじゃありません! どちらかと言えばイタチです! そして、属するのなら、女の子に大人気のフェレットに属したい!」
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