夢じゃない朝

4/6
前へ
/157ページ
次へ
「いい匂いです」  薫も自分の食事をテーブルの上に置き、そのそばに座る。 「いただきます」 「いただきます」  この部屋で誰かと食べるのは初めてで、薫は何だかむず痒い変な気分になった。  ヴィーゼルは前足でサンドイッチを掴み、ハグハグとかぶりつく。そして、ふと止まって薫を見た。 「これ、おいしいです」 「……そうか」  少し赤く染まった頬をヴィーゼルに隠しながら、薫もご飯を食べ始めた。 「そうだ。俺はこれから仕事だが、ヴィーゼルはどうするんだ?」 「ほふふぁひょひょっふぉふぉふぃ」  ヴィーゼルはサンドイッチをくわえたまま喋る。 「それを飲み込んでから話せ」 「……ボクはちょっと外に出ます。シュテルン石を探さなければならないので」 「そういえば、シュテルン石ってどうやって探すんだ?」  昨日、シュテルン石のことを聞いた時には、その話をしていなかった。 「シュテルン石が特殊なエネルギーを吸い込むということは話しましたね?」 「ああ、それが溜まると実体化するって」 「まっさらなシュテルン石を探すことは困難ですが、エネルギーを吸い込んだシュテルン石は探知することが出来ます。ただ、その範囲がかなり狭い。エネルギーを溜め込めば溜め込むほど範囲は広がりますが、それでも、数キロといったところです。そして、そこまでエネルギーを溜め込めば、すぐにでも実体化します」 「つまり、実体化する前に回収するのは難しいってことか」
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

277人が本棚に入れています
本棚に追加