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出来ることならば、魔法少女に変身せずシュテルン石を回収したかった薫は、目に見えてがっかりした。
「実体化すれば、範囲は数十キロと広がるんですけどね。とりあえず、この周辺から探してみます」
「是非とも頑張ってくれ」
薫は力を込めて言う。
その頑張りいかんによっては、薫が恥ずかしい思いをせずに済むのだから。
「さて、仕事に行く用意をするか」
食べ終わった皿をキッチンに持って行き、薫は朝の用意を始める。その間、ヴィーゼルはサンドイッチを食べ続けていた。
「ふぅ。お腹いっぱい。満足です」
「お、食べ終わったか」
薫はヴィーゼルの横に紙で出来た箱を置き、皿を片付ける。
「何ですか? これ」
ヴィーゼルは箱を開ける。中にはサンドイッチがぎっしり入っていた。具材はレタスとポテトサラダのようだ。
「ヴィーゼルの分のお弁当。いるだろ?」
皿をキッチンに置いてきた薫が、部屋に戻って来て答えた。
小さな身体には不似合いの量の弁当だったが、ヴィーゼルは意外とよく食べる。昨日は誕生日ケーキを全てたいらげていた。
魔法少女にまつわる件で食欲は失せていたのでケーキを食べられてもかまわなかったが、ホールケーキが小さな身体のどこに消えていくのかと薫は驚いた。
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