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「勝手にヒス~? ってことは、女のコの日だったのかな、佐野」
とぼけた様子で言う森宮を、緒川が睨む。
「下世話なこと言うな」
幸成は、息をつめるように、松下の気配をうかがっていた。
松下は少しもこちらを見ることなく、ボトルタイプの缶コーヒーを傍らに、惣菜パンを食べだしていた。
「松下さ~、ユッキー誘ったから一応訊いてやるけど、おまえもカラオケ来る?」
「カラオケ? いつ?」
「今度の土曜」
「――行かない」
予想していたことなのに、その言葉に幸成は傷ついた。
「中沢さんと会うの?」
「――そう」
松下は、緒川に普通に答えた。
「おまえだけがリア充かよ。あーあ、たまには佐野がおまえをフルボッコにすればいいのに…」
「もりーの言うとおりだな」
森宮と緒川のやりとりに、幸成はやっとの思いで、笑っているふりをしてみせた。
松下は相変わらずこちらを見ようとはしない。
まるで、自分を無視しているかのように。
…考えすぎだろうか。
でも、購買に行くまで、松下の態度は普通だったのに。
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