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「松下……」
呼びかけると、こちらを見た松下と、視線があった。
その表情は変わらない。
手のひらが汗ばんだ気がした。
「あのさ―――」
言い淀んでいると、松下が訝しそうに目を細める。
「さっき―――何言われたの」
「さっき?」
「昼休み―――佐野さんに、何か言われたって―――ほら、森宮も聞いてたし………大丈夫、だった………?」
たどたどしく言っていると、ああ、と腑に落ちたように松下が表情を緩めた。
「別にたいしたことじゃない。あいつはおれにいちゃもんつけるのが好きだからさ」
松下はなんでもなさそうな口ぶりで言ったが、それでも幸成は訊かずにはいられなかった。
「バレた、とかじゃないよね……?」
「バレた?」
聞き返されても、それ以上は口にできなかった。
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