3258人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
不安な面持ちでただじっと松下の目を見ていると、不意に、松下の手が顔の前に伸びてきた。
ぷにっとほっぺたをつままれる。
松下の眼差しがいたずらっぽく笑う。
「―――大丈夫」
声にならない声が言っていた。
バレてないよ、おれ達のことは。
ようやく肩の力をぬくことができた。
頬をひっぱられたままの幸成は抗議の声をあげた。
「痛いってば」
手を離した松下は、優しい眼差しをみせながらも、
「おまえは気がちっちゃいなー」
と、癪に障ることを言う。
幸成はムッとして、それでも声を抑え気味に言った。
「おまえのために心配してんだろ」
なんでかな。
なんでおれ達、こんな風に普通に話してるんだろ。
頭の片隅で、ふと思った。
そういえば、今朝もだった。
SHR前、近づいて話しかけてきた松下を、幸成は不思議に思わずにはいられなかった。
いつもどおりの表情。態度。
距離なんてちっとも感じない。
ゆうべの今日なのに。
最初のコメントを投稿しよう!