彼のそば

14/66
前へ
/604ページ
次へ
なんでこんな目をするんだろう。 こんな目で見るんだろう。 ……悪いと思っているから? 自分じゃなく、梨絵奈を選んだことを? だからだろうか。 あくまでも自然体で振る舞っているとばかり思っていた松下が、決してそうではないことにも、肌で気付いてしまった。 以前と変わらず接してくれているように見えて、その実、松下は自分を気遣っている。 繊細な、壊れやすいものを前にしているかのように、あるいはこちらをうかがっているかのように、一歩退いて自分の側にいる。 それでいながら、表面上は、以前さながら屈託なさそうに話し、笑う。 それは、無意識なのか、 そうではないのか。 幸成は感じる。 松下と自分の間に、透明な、薄い膜のようなものができてしまったことを。 今までなかったものが明らかに存在していることを。 これで、前みたいな友達になんて、戻れるの?
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3268人が本棚に入れています
本棚に追加