処女

3/4
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
「あれれ? なおちゃんに限って、まさか未経験なんてことないよねぇ?」 めざとくため息を聞きつけると、やけに語尾を上げて嬉しそうに近づいてきたあゆみ。 私はそんな彼女に軽く苛立ちを覚えて、唸り声を上げた。 「……がるるるる」 「おお! こわっ」 大げさに飛びのいて、あゆみがみさの後ろへと避難した。 はぁ……。 なんで私だけ……。 しかもこのメンツの中で、ただ一人の処女なんてレアすぎる。 「やだ、あゆみちゃんったら! 大きな声でなおちゃんが処女だなんて! 本人が気にしてることいっちゃダメよ!」 あゆこが、教室中に聞こえるような声をあげて、高らかに私の処女を宣言した。 ニヤニヤと私の顔を覗きこむみさとゆっこの隣で、あゆこがまさにご近所のおばさんポーズを決める。 「ああ、あ、あんたの声のが、でかいわぁっ!!」 思わず突っ込みの声に力がこもったものの、教室にいたほぼ全員が、一斉に私を振り返った。 「うそ……井上が処女とか、ギャップありすぎだろ」 「あのなおちゃんが? なおちゃんってプレイガールで有名じゃ?」 まてまて。 プレイガールとは何事だ! 冷や汗のような、よくわからない水分が、体中からぶわっと湧き出したかと思うと、空気を察したみさが立ち上がった。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!