昔々、どこかの山奥で。

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昔々、どこかの山奥で。

昔々。 ああでも、それほど昔って訳じゃない、かな。 ちょっとだけ昔。子供が、大人の見習いになるまでくらい昔の話。 人里から離れた山奥でね。 女の子が間違ってしまったんだ。 雪の降る日だった。 真っ白い細雪がふわふわ舞い落ちてる様はきっととても綺麗だったんだろうね。 ま、それを鑑賞できる精神状態にあったらの話だけど。 その日、女の子は妹を殺した。 直接手を下したのか、そうでないのか。その細かいところは女の子と妹と、そして覗き見をしていた誰かさんしか知らない。 けれどとにかく事実として、女の子は妹を殺した。 間違いっていうのは、殺しちゃったことじゃない。 家族を。守るべき、妹を。 殺してしまったのはとても悪いことではあるけれど、ダメじゃないんだ。 それはまだ、ごめんなさいって言えば、誰かが許してくれる範囲のこと。例えば、高みの見物決め込んでるカミサマとかがね。 肝心の間違いって言うのは、家族を殺すことよりも何百倍何千倍、いやそれよりももっとダメなのは、犯してはいけない間違いは、 あんな化け物を抱え込んでしまったことさ。 あれに関しては、俺が化け物と、呼べる権利は持っていないけどね。 でもみんなが化け物と呼ぶからさ。そう呼んだ方がわかりやすいよね? まあ真実、あれはどうしようもなく化け物なんだけど。 さて。 準備は整った。 人事はほぼ尽くされた。天命には従えない。 ならば、あとは何を待てばいい? 何を成せば、俺は目的に辿り着けるのか。 もしかしたら。 彼女が、その鍵を握っているかもしれなかった。 と、色々余計な話もあったけど、昔話はこれで終わり。 質問は受け付けないよ。 ん、俺? 質問は受け付けないって言ったけど。 まあ、それっぽいことは言っておこう。 俺は神様だよ。 高みの見物決め込んでるのに納得のいかない、新米神様だよ。 それと。 そういう君は、誰なんだい?
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