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『そんな事言われても無理っスよ! ウチの構成員を二百人体制で配置してもものともしてないんスから! 最新のセキュリティ組んでるのに簡単に突破されるし! ……って、う、うわあああ! こっちに来……っ!』
『おい! どうした!? 応答しろ!』
『侵入者、B-2を突破! 既に七十名近くの被害が出ています!!』
オペレーターは多すぎる情報量に辟易しながら、何とか状況を男に伝えている。しかしその内容は須らく男の頭に血を上らせた。
『クソ野郎が!! 奴の目的はまだ分からないのか!?』
『お、おそらくコントロールルームへ向かっているのかと!』
『途中経路に残りの人員を全て配置だ!』
『りょ、了解!』
オペレーターから指示が出て、警備に当っていた構成員たちが動く。全て、とは、つまり百三十人以上の人間である。
そしてまもなくして移動が終了し、その様子がカメラ越しに窺えた。そこには、ほぼ一本道の通路に、まるでムカデ競争のように武装した人の列があった。
『これで終わりだ……。侵入者の現在地は?』
これを超えられる者はいない。そう思った男は僅かに声を緩める。
しかし、それも束の間のことだった。
『はっ! そ、それが……き、消えました!』
『消えたぁ!? 馬鹿を言うな!』
一瞬の弛緩のせいか、先程以上に男から余裕の色が消えた。
『カメラも、熱探知センサーも、どのセキュリティにもかかりません!』
『一体何をやってるんだ! 相手はたった一人だぞ!? …………もういい! アレを出せ!』
男は既に、完全にやけになっている。しかし意を決したかのような声音が窺えた。
『は? しかしアレはあくまで試験段階の、しかも……』
対してオペレーターは困惑の声を上げる。彼には男が遂に暴挙に出たのでは、とさえ思った。
『出せといっている!!』
『りょ、了解!』
男の有無を言わせぬ口調に、オペレーターは指示通りにパソコンのキーボードを叩いた。
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