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『侵入者、コントロールルームに現れました!』
『アレはどうなっている!』
『F-3381、稼働状態にあります!』
F-3381とは、試験運用を目的としてこの施設に積まれた警備システムだ。
開発者が、最先端の技術の粋を集めた最高の装置、実用化すれば歴史が変わるとまで豪語した代物であり、彼らの奥の手である。
それが、たった今コントロールルームで起動する。
『よし、これで……』
『いえ、待ってください!』
ようやく安堵の息をつこうとした男に、オペレーターは水を差す。本人にとっても不本意ではあったが。
『まだ何かあるのか!』
立て続けに起こる事態の悪化に、もはや男は焦りよりも苛立ちが先にたった。
『F-3381、稼働を停止しました!』
『なんだと!?』
その報告に、男はもう何度目になるか分からない言葉を発した。しかしそれは、奥の手が一瞬で使い物にならなくなったのだから、仕方ないことだろう。
『これは……、サーバーにハッキングの形跡があります!』
『何!? 何故今まで気が付かなかった!』
『も、申し訳ありません! ……!? セキュリティシステム、全てシャットダウンされました!』
『ッ!! まずい、F-3381は!?』
原因を探ったオペレーターが見つけたのは、自らの施設のネットワークが相手に掌握されたという、最悪の結果だった。
そして驚いた男が最初に気にしたのは、最新装置の安否である。
いくら緊急事態とはいえ、上の許可無く起動したのだ。傷一つついただけでも、自分の身に何が起こるか想像に難くなかった。
『所在不明! ネットワーク、完全に途絶しました! 侵入者の位置も不明です!』
『クソ! 最初からアレが狙いだったのか! ……探せ! 構成員全て使って探すんだ!』
ここに至り、ようやく男は侵入者の目的に気付く。
相手の狙いは最初からF-381の強奪にあったのだ。
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