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「康太」
今度は浦来にお鉢が回ってきた。
「なに?」
「教室で説明した時は、リリィさんは知り合いだって言ってたらしいけど」
この言葉で、そういえばあの時教室に由夢がいなかったことを思い出す。
しかしクラスメイトから又聞きしているらしく、もう一度説明する必要もないだろうと判断した。
そしてこれはおそらく彼女の本題だろう。
「う、うん。言ったと思う」
再び心構えをし直した。
余計なことを言って、リリィの正体を感づかれてはいけない。
「知り合いって、どこ関係?」
そして彼女はいきなり核心を突いてきた。
由夢の知らない所で、と言ってしまうと、そこから新たにエピソードをねつ造しなくてはならなくなる。
今までの『設定』と矛盾しないようにと前置きすると、浦来にその話をする自信はない。
もちろん本当のことは言えない。
彼女がロボットだと言って信じてもらえるはずもない。
そもそもリリィの存在にどれだけの危険が付きまとうか分からない以上、たとえ信じてもらえなくても、言うだけでそれに由夢を巻き込む恐れがある。
だからといって、由夢が知っている範囲での知り合いだと言っても、すぐにバレるだろう。
「えっと……」
結局浦来は即答できなかった。
そしてそれだけで、由夢にはおおよその当たりが付く。
「『ホーム』の人、じゃないよね。新しい子が来たなんて話は聞かないし。……もしかして、あの万屋関係?」
その声には、ただ答えを聞きたいだけの好奇心はほとんど窺えない。
そうであって欲しくない、と言っているのが彼にはすぐに分かった。
『ホーム』という単語に少し反応してしまった浦来だが、一々応えるようなことはしない。
「…………」
違う、と言いたいが、しかしその先の考えもない。
「ふ~ん、やっぱり」
沈黙で察したのだろう、彼女は咎める視線を向けた。
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