第二章

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 幼馴染の女子、由夢と別れた後の帰路。  途中すれ違う人の何人かが、その整った容姿ゆえに振り返ってリリィを見ていた。  だが、その一つ一つを気にしていたらきりが無い。浦来は足早に家に帰った。  少年の自宅は、優子が副業として経営するマンションだ。  学校から歩いておよそ二十分に位置していて、中心街に程近く、交通の便も良い。  立地としては好物件だろう。建物自体は三階建てで貸し部屋が九室の、やや小ぢんまりとしたものだ。  二階の二〇二号室が浦来の部屋。両隣は常に空き室となっていて、身を隠したい依頼人などを一時的に匿ったりすることに使っている。  マンションの正面に来たとき、リリィが初めて浦来の前に出た。 「護衛レベル五でのセキュリティチェック中……完了。セキュリティに問題ありません」  どうやらこのマンションに危険がないか調べていたようだ。  入り口でカードキーを使って開錠する一般的なものだが、一般人を対象にした『護衛レベル五』とやらなら、問題はないと判断されたらしい。 「鍵を開けてもらえますか?」  浦来は言われた通りに上着のポケットからカードキーを出して、扉の鍵を開けた。  失礼します。  言うが早いか、少女は扉を開けて中に入る。  先に入って中に異常がないか調べるつもりなのだろうと踏んだ浦来は、黙って入り口で待つことにした。  リリィは玄関で足を止める。 「室内をスキャンします。侵入者の痕跡……無し。空気比率……正常。爆発物の可能性……無し。危険を確認できませんでした。――お入りください」  つい午前中まで全く分からなった言葉が、ようやく浦来にも意味を伴って入ってきた。  彼女は室内の危険の可能性を検証して、それは見つからなかったということだろう。  促されて、浦来はようやく自宅に入る。 「……ただいま」  一人暮らしである彼に返してくる人間はここには本来いないのだが、これは単に彼の習慣だ。ここが自分の家だと思えるよう、必ず声に出している。 「おかえりなさいませ」  しかし今日からは違う。既に部屋に入っていたリリィが頭を下げることなく言った。  もっとも、返答したのはやはり人間ではないが。
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