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暗がりで見えはしないが、男たちはかなり気が立っていて、目が血走っているだろう事は、少年にも容易に想像がついた。
なによりこちらの身元を確認もせずに撃ってきたのだから、彼らがどれだけ血気盛んで、かつ気が逸っているのかはすぐに分かろうというものだ。
「おっと、やばい。外についてた見張りかな? ……一、二……三人か」
しかし少年は殺されるかもしれないこの状況で、全く動揺していなかった。
それどころか余裕すら見て取れる言葉を発しつつ、背後に高く積まれたコンテナ達の間に身を隠した。
焦っていないとはいえ、別に銃が効かないわけではないのだ。
「待てコラァ!!」
さらに怒気を強めた男たちは、一斉に少年に向かって駆けた。
コンテナ同士の隙間は、人二人が並んで通れるかという幅しかなく、チンピラたちは前に一人、後ろに二人の形で少年を追う。
が、道の先まで見渡しても、既に少年の姿は無かった。彼らは分かれ道で足を止める。
「――人数いるのに固まってどうするんですか。はい、二人」
そこに背後から突如として現れた――コンテナの上にいた少年が、一瞬で後ろの二人を気絶させる。
掌底を顎に当て、脳を揺らしたのだ。
一人は飛び降り様に、もう一人は相手の振り向き様に。
「え、な…………?」
不意のうめき声と倒れた音に先頭の男が振り向くと、そこには追いかけていたはずの少年の姿がある。
チンピラが驚きで一瞬硬直した隙を、少年は見逃さない。
相手の手首を捻り上げて持っていた銃を落とさせると、鳩尾に抜き手を一発、股間に蹴りを一発。
それで終わった。
「……三人、と。武器持ってても、所詮はチンピラかぁ……」
どこかつまらなそうに呟いて、少年は乱れたジャケットを着なおした。
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