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冷蔵庫
飲み会で終電を逃し、途方に暮れていたら、先輩が自宅に泊めてくれることになった。
店から近い位置にあるマンションに行き、部屋に上がり込む。そのまま暫く、飲み屋のノリで話していたが、ふと会話が途切れた。
「なんか、喉乾いたな」
「冷蔵庫に、飲むモンとか入ってます?」
「あー…昨日、2Lペット買ったけど、入れるの忘れてた」
「氷あるなら、そいつグラスに注いできますよ」
「おぅ。悪いな」
「泊めてもらうんですから、このくらいしないと」
立ち上がり、キッチンへ向かう。ベッドボトルはすぐ目についたので、それをコップに注いで…冷えてる方がいいだろうから、氷の一つも入れようか。
「先輩、氷もらいますよ」
「おお」
返事を聞きながら冷凍庫を開く。その中にはぎっしりと食材が詰まっていて、俺は目を丸くした。
ラップに包まれた…これは、肉、かな? 他に、もすぐみたいのも入ってる。やたらと大量だけれど、特売品とか買って冷凍してるんだろうか。
会社に弁当を持って来たのを見たことはないけど、これだけ大量に食材を冷凍ストックしてるってことは、普段から料理をしてるんだろうな。
「先輩って、自炊とかマメにするタイプだったんですね」
「あー? 飯なんか作ったことねぇよ。つーか、作れねぇし」
隣室に声をかけると、すぐにそんな返事が戻った。
「でも、肉とか、こんなにたくさん冷凍してあるじゃないですか?」
言いながらもう一度冷凍庫を開ける。その瞬間俺は再び目を丸くした。
冷凍庫はほぼ空だった。さっき見た筈の、大量の食材はどこにもない。
「冷凍がどうしたって?」
なかなか戻らない俺に業を煮やした先輩が台所にやって来る。
「いえ、その、さっきは冷凍庫いっぱいの食材が凍ってたのに…」
「この冷蔵庫、冷凍の方もでかくて。たっぷり食材が入るみたいだな。リサイクルショップの親父が言ってた」
酔ってるせいか話が噛み合わない。だから俺は先輩の話を優先した。
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