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「ほら、食べてみて?」
トウヤはそのまま満面の笑みで見つめてくる。
そして俺は促されるままに包装紙を開き、箱の中の小さなチョコレートを、1粒食べた。
口の中で溶けていくそれはやっぱり甘くて、でもほろ苦くて、トウヤの味がした。
「美味しい?」
「……うん、美味いよ」
俺がそう答えると、トウヤは飛び跳ねるような勢いで喜びの声をあげる。
「よっ……しゃぁ!どんなチョコがいいか結構考えたんだよね、結構好みとかあるしさ」
ニコニコとそう言って、椅子に座ったままの俺に抱きついてくるトウヤ。
俺はそれを受け止め、トウヤと見詰め合う。
「でもこれってセミスイートだろ?悪くは無いけど、俺はもっとガッツリ甘いミルクの方が好みだな」
俺がそう言うと、珍しくトウヤはキョトン顔。
してやったりと思ったのも束の間、トウヤの一言で、俺はまたもや赤面させられることになった。
「残念でした、僕はそんなに甘くないよ」
トウヤはまたあの俺だけに向ける笑みを浮かべ、もう一度口付けを重ねてくる。
それは、さっきとはまるで違う、噛み付くような激しい口付けだった。
ああ、やっぱり甘い……甘くて、ほろ苦い……
扉の向こうの廊下では、数人の生徒の声が響いている。
そう言えばそろそろ、他の皆がやってくる頃だ。
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