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「でもさ……隼人は『ショートボブ』がタイプなんでしょ?」
……その瞬間、彼の動きが止まった。
それは滑稽なぐらいに露骨な反応で、私は笑うしか無かった。
「な、な、なぜそれを……あ! い、いや、何でもない」
「………………」
「しょ、ショートボブがタイプなわけないだろう! お、俺はお前みたいな……そう、その綺麗な『ロングヘアー』が似合う女がタイプなんだから」
「………………」
私は物憂げに、腰辺りで綺麗に『切り揃えた』自分の『長い髪』を優しく撫でた。
子供をあやすかのように、そっと優しく。
……未来の私は、この場面で、優しく彼に抱かれていたんだろうか。
……彼が恋してる『ショートボブ』の女とは、どんな奴なのだろうか。
……あれ?
なんだこれ。
私は胸に僅かな痛みを感じた。
その痛みは、水面に浮かぶ波紋のように、じんわりと胸の奥に向かって広がっていく。
これが失恋? という奴なのだろうか?
経験の無い私には、ちょっと良く分からない。
……どうしたら?
私は再度、もう一人の自分からのメールに期待をした。
けれども、その差出人からメールが送られてくる事は、もう2度と無かった。
了
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