本章

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「あなたはあの日、5年後の私からのメールを受け取ってしまった。 本来『A世界』で起こる予定ではなかった、未来からのメール受信、という出来事が起こってしまったの。 その瞬間、あなたが未来からのメールで8億円を手に入れる『B世界』が新たに生まれ、『時間軸A』から枝分かれする形で新たに『時間軸B』の時の流れがスタートしてしまった。 でも、もともとあった『A世界』だって、なくなったわけじゃない。本来、世界はそちらに進むべきだったんだから。 つまり、未来からのメールが来ない『A世界』では、あなたが8億円を手に入れることもなく、平々凡々に毎日を送っている『時間軸A』の流れがそのまま続いているの。 過去を変えるとその瞬間から、本来この世に1本しかないはずの『時間軸』がもう1本できて、枝分かれしてしまう。 誰かが過去に接触するたびに、『時間軸』の枝分かれが起こり、1つしかななかったはずの『世界』が、増えていってしまうの。 だから、過去への接触は、絶対に禁止されている。『A世界以外の世界』を、あなたの時代の概念で言うなら、『パラレルワールド』を、いくつも生み出してしまうから。」 …ちょっと。 偏差値40の私には 話が難しいんだけど…! 私はよくもない頭をフル回転させた。 「…ようは私は今、『B世界』ていう『パラレルワールド』に存在してるってこと?」 「そう!バカなりに分かってるじゃない!」 カチンときたが、私がバカってことは 目の前のコイツもバカってことじゃん。 「でもね、それだけじゃない。 昨日また、未来の私からの接触があったわよね?31才の私。 今度はメールじゃなくて、直接会いに来たはずよ。 彼女、株式投資の話を持ってきたんじゃない?」 「…そうよ。M社の株を買えって言ってたわ。」 「やっぱり。その接触によって、今度は『時間軸B』から枝分かれしてできた『時間軸C』をたどる世界、『C世界』が新たにできてしまったの。 未来からのメールは来ないし、31才の私が会いにも来ない『A世界』と、メールのおかげで8億円は手に入れるけど、31才の私は会いに来ない『B世界』、メールは来たし、31才の私が株式投資の助言のために会いにも来た『C世界』。この時点で、『世界』は少なくとも3つに増えてしまったのよ。」
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