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だけど。
「まさか、貴方は天秤において最も重要な存在です」
無意味な虚勢も、男の発言で長くは続かなかった。
「それって、どういう」
私の言葉なんて気にせず、男はコートの右ポケットから何かを取り出し、こちらに差し出した。
二つ折りにされた水色のそれは、今はもうほとんど見かけることのない前時代のケータイだった。
古いからなのか、持ち主が粗雑に扱ったからなのか、ケータイはいたるところ傷だらけで、汚れていた。
「これは数年前の、ある高校生が持っていたものです。その高校生は当時、学校へ向かう途中にある交差点の信号待ちに会い、待ちぼうけていました」
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