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加奈は紅茶を放り出し、びしょ濡れの忠興に駆け寄った。
あれだけ会わないと宣言していたくせに、加奈を前にした忠興は、この上なく嬉しそうだった。
「やーんっ。どうしたの、袴田っ」
「来てくれたんですねっ、忠興さんっ」
「お前まで懐くなっ」
しっ、し、と志免は足で払われる。
「なにしに来やがった、袴田!」
突然の忠興の乱入に、噴いた紅茶を拭いながら、内藤は立ち上がる。
「こんな真っ昼間から加奈に会いにきやがって!」
「夜ならいいのか?」
そう冷静に問う忠興に、内藤は黙る。
「忠興さん、さっきの―」
言いかけた志免を、忠興は睨んだ。
「さっき? さっき、どうかしたの?」
「どうもしないよ、加奈」
と別人のような優しい目で、タオルを持ってきた加奈の瞳を覗き込む。
ああ、ばかばかしい。やってられないと思いながらも、うっとりと微笑む加奈の幸せそうな顔に、ぐっと堪えた。
だが、堪えられない人間もいた。
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