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「用がないなら、今すぐ出ていけ~」
殴り殺しかねない勢いで空になったカップを掴んでいる。
その手を、後ろから壱子が止めた。
「高いんです、そのカップ」
壱子に目を留めた忠興は、加奈から手を放すと、彼女に呼びかける。
「壱子、ちょっと調べて欲しいことがあるんだ」
「なんですか?」
どうも、その、と忠興は珍しく言いよどむ。加奈を気にしながら、口にした。
「命を狙われているらしいんだが―」
「ええっ!?」
忠興はさっきあったことを出来るだけ、ソフトに話した。
「最初は内藤の悪戯かとも思ったんだが、よく考えたら、こいつにそんな度胸もコネもあるはずもないし」
睨んだ内藤を無視し、話は進む。
「いいですよ、何か心当たりは?」
ビジネスライクに、さらりと壱子は訊く。
心配していないわけでもないのだろうが、どうにも感情の読み取りづらい女性だった。
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