第一章 未必の故意

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「用がないなら、今すぐ出ていけ~」  殴り殺しかねない勢いで空になったカップを掴んでいる。  その手を、後ろから壱子が止めた。 「高いんです、そのカップ」  壱子に目を留めた忠興は、加奈から手を放すと、彼女に呼びかける。 「壱子、ちょっと調べて欲しいことがあるんだ」 「なんですか?」  どうも、その、と忠興は珍しく言いよどむ。加奈を気にしながら、口にした。 「命を狙われているらしいんだが―」 「ええっ!?」  忠興はさっきあったことを出来るだけ、ソフトに話した。 「最初は内藤の悪戯かとも思ったんだが、よく考えたら、こいつにそんな度胸もコネもあるはずもないし」  睨んだ内藤を無視し、話は進む。 「いいですよ、何か心当たりは?」  ビジネスライクに、さらりと壱子は訊く。  心配していないわけでもないのだろうが、どうにも感情の読み取りづらい女性だった。
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