第一章 未必の故意

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 後ろの痴話喧噪を聞きながら、ノックしてパソコンルームに入る。  壱子は振り返らずに言った。 「どうしたの?」 「いえ。あのバカップル見てるの、馬鹿馬鹿しくて― お邪魔ですか?」  愛用の自作デスクトップを立ち上げながら、いいわよ、たいしたことしないから、と言う。  隣の部屋はまだ騒がしい。それを聞きながら、壱子は微かに笑った。 「里美が忠興さんに拘ったのは、絶対落ちないからなんだって、加奈さんもわかってるだろうに」 「そうなんですか?」 「彼女もそれなりモテたみたいだから、自分の方を見もしなかった忠興さんにむかついたんじゃないの?  ま、今加奈さんと仲悪いのは、聡さんの加奈さんへの態度が癇に障ってるだけなんでしょうけど」 「聡さんと加奈さんって、ほんとにそんなに仲がいいんですか?」 「ま。里美が、ハラハラする程にはね」
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