第一章 未必の故意

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 立ち上がった画面は、すぐにネットに繋がれ、壱子がマウスを動かすのに合わせて、次々に画面が切り替わる。  志免は側の椅子を引いてきて座った。  これを壱子は読んでいるのか。  相当な動体視力だと思った。  志免は壱子が横に居ていいと言ったわけを知った。  これでは何も読めはしない。  しばらくして壱子が言った。 「ほんと。  特にシンジケート絡みで狙われてるわけじゃないみたいね。  で? 何処で狙われたんだって?」 「その先の工事現場です」 「シティホテルの改装工事のとこ?」 「そうです」  壱子は身を乗り出して、パソコン越しにビルを見た。  あのホテルは此処からだと、他のビルの陰になっている。 工事用の水色のビニールシートが、はためくのだけが僅かに見て取れた。
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