第一章 未必の故意

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 少しは好みだったのだろうかと思う志免の前で、ぼそりと呟く。 「最初は兄弟だなんて知らなかったから、特に興味もなかったんだけど」  自分の失言に気づき、壱子は慌てて、印刷していたものをプリンタから引き抜く。 「行きましょうか、そろそろ隣、止めないと」  そうか。忠興さんが竹内さんの弟だから、サービスいいのか。  それに、竹内が好みなのなら、忠興は、好みから大きく外れているはずだ。 「何がおかしいの、志免くん?」  いえ、別に、と恐れ知らずにも笑った自分に気づき、慌てて立ち上がる。  壱子さんも可愛いところがあるなどと思っていたのだ。
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