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隣に行くと、まだ騒いではいたが。
傍目には、加奈が忠興に甘えているようにしか見えなかった。
たまにしか会えないから、この二人、こうもベタベタなのか。
しびれを切らしたように内藤が机を叩いて立ち上がる。
「早く帰れ、忠興っ。
カニが腐るぞっ!」
なんでカニ? と加奈が眉をひそめた。
だが、内藤は、
「密輸といえば、カニだろうっ」
と言い切る。
「扱ってんのは美術品だ。それに、今俺が雇われてるのはマフィアじゃないぞ」
今、忠興が居るのは、裏にも顔のきく美術品ブローカーのようだった。
それも軽い契約の護衛程度。
意外に堅実な男だった。
恐らく加奈に迷惑がかからないようにだろう。
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