第一章 未必の故意

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「突っ込んでるというか、突っ込まざるをえないようですね。  里美に弱みを握られているので、いいように使われているようです」  紙の束を加奈の机に置き、見たらシュレッダーにかけてくださいと言う。 「まあ、真田にはいい薬になるか」 と加奈は、見るともなしに、それらをぺらぺら捲っている。  壱子に絶対の信用を寄せている加奈は敢えて自分でチェックする気はないようだった。 「とりあえず、花巻建設に探り入れてみましょうか?」  花巻? と内藤が問い返す。 「問題のシティホテルの改装工事を請け負っているのは花巻です」 「いや、そうじゃなくて、花巻ってお前―」  ま、と壱子は、ちょっと薄ら寒い笑みを見せる。 「いざとなったら、乗り込みましょう」
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