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「所長、熊みたいに歩き回らないでくれますか?」
意味もなく新聞ラックの周りを歩き回っていた加奈に、キッチンから出てきた壱子が眉をひそめる。
ちょうど目の前に居て邪魔だったのだろう。
「だってえ、だんだん心配になってきちゃったんだもん。大丈夫かしら? 袴田」
「あの男を殺せる人間なんて滅多に居ません。
居るとしても、相当金を積まなきゃ動かない連中です。
今のとこ、袴田忠興にそんな価値はありません」
「壱子~っ」
それはそれでどうっ!? と睨む加奈に溜息をつき、壱子は言った。
「そんなに心配なら、里美に訊いてみたらどうですか? 真田よりかは確かですよ。
でも、ひとつ、私見を言わせていただいてよろしいですか?
どうも私、今回の一件、本気ではないような気がするんです」
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