第一章 未必の故意

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 忠興は振り返らずに言った。 「ああ、お前は確か― 新免」 「志免です」  そうか、と特に謝るでもなく、忠興はそのままバイクを押していく。  この人もなんだかなあ。  独特なテンポだよな。  っていうか、いつから日本に? と思いながら、未だ小走りに付いていく。  忠興はただ、大股に歩いているだけなのだが。  哀しいかな、足の長さの違いだろうか― 「あのっ」 とあまり相手にされてないようだが、めげずに志免は話しかける。 「事務所に行かれるとこなんですか? 僕も今から行くんですけどっ」 「いや」 「え。いやって……」
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