第一章 未必の故意

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 捲くし立てる志免に、根負けしたようだった。  さっさと答えらしきものを与え、追い払おうとでも思っているのか、一気に答える。 「加奈は知らない。会わないのに言っても仕方がない」 「いや、そういう問題じゃないと思うんですけどっ」  忠興は、ちらとこちらを見て、 「お前が口を出すことじゃない」 と言う。  それはそうなのだが、と忠興の視線の鋭さに怯みそうになったが、なんとか加奈のために踏みとどまる。 「そうですけど。僕、黙ってませんよ」  なに? と思わぬ反撃に振り返る。 「此処で忠興さんを見たって、加奈さんに言います。加奈さん、捜すかもしれませんね」 「……いい度胸だな、新免」  不敵に笑う忠興に、志免は負けじと言い返した。 「志免です」
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