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村ではルズさんが出ていった事で話題になっていた。
私はラムです。司祭様の手伝いをしております。
「ラムさん。ちょっとよろしいですか。」
「なんでしょうか。」
不意に司祭様に声をかけられる。実をいうと私もルズさん同様司祭様に拾ってもらった身だ。だからか司祭様には恩返しのつもりで沢山役に立ちたいと思っている。
「これからでかけますが、ラムさんはここでお祈りをしておいてください。その後この村の子羊たちを見守っておいて下さい。」
「分かりました。いってらっしゃい。」
そんな会話をして司祭様は出ていった。私は言われた通り十字架に向けてお祈りをした。およそ30分程だ。
その後何人かの人が教会に出入りしてきた。私はそれを黙々とただ部屋の脇で見ていた。
皆黙々と願いを込めて十字架に語りかけている。
私はこの光景が好きで無心で見ていた。
部屋の中の人は大方年配が多く見られた。私は何かの衝動にかられたのかその人たちに声をかけていた。
「こんにちは。今日はどうされました。」
「こんにちは。いやここのルズという子の無事を祈っているのじゃよ。ラムさんあんたはルズが大好きじゃったからのぅ…さぞ心配じゃろうに…」
60代位の女性が心配そうにこちらの顔色を確認しながらそう呟いた。
私は聞こえてない振りをしてそのまま彼女のそばを離れた。
確かにルズさんのことは心配ではあるが、大好きだったかどうかと問われると私には理解が出来なかった。
分からない。それ以外に答えは見いだせなかった。
何故ならルズさんは家族同然の人となってしまっていたからだ。
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