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それから10分位走った辺りに元いた場所に戻ってきた。
教会を出てから意外と時間が経っていたのか、太陽は真上あたりまで昇っていた。
どちらにせよ、村人が何人か外に出ていたので私は
「皆さん、たいへんです!ここから先の泉に魔物が現れました!今すぐ避難してください!」
先程走っていたからか、言葉が多少荒っぽくなっていたことに気づいた。それに村人達も気がついたのか、村人は一様に慌てだした。中には発狂して何かわからぬ事を叫ぶ者、全身に力が抜けてその場に倒れこむ者、子供みたいに泣きじゃくりながら大声を上げている者がいるのを確認した時に、私は凄く後悔した。
もしかしたら皆を混乱に陥れただけなのではないか…と。
「落ち着けー!今司祭様は村の食料調達のために村をお離れになられているが、今から連絡をして助けて貰えるように頼んでみるから!希望を捨てるな!」
村に何かしら厄介事が起こった時のために、1人男が残っていたようだ。
その男は続けて
「シスター殿!奴は貴方が走って来た方角にいるのですね!ならば私が足止めをしに行きましょう!」
そう言ってその男は私が来た方角に向かって走り出した。
それを只横で見ているしか出来なかった。
私は無力だ。そう実感させられたと同時に、私もその場に膝地に着けずにいられなかった。
脳裏にある人物が浮かんだ。この時ルズさんならどう動いただろうか…と。
村人は私を慕ってくれたが私は何かを返せていただろうか…司祭様にお返しをしただろうか…感謝の言葉をのべられただろうか…答えは全てを否である。
ならば今私が出来る最善の事は…司祭様が戻ってくるまでの時間稼ぎだ。そう思った時には足がすこし軽くなった気がした。
地から膝を上げて立ち上がり、目の前の現に視線をやる。そこには3体の悪魔が増えていた。
その悪魔が何なのかは私でも分かった。…それはキマイラであった。
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