未来の自分との出会い

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詰まらない人生も事実だ。変えてやるとは。健一は興味を抑えきれずにメールを開いた。 俺の五十年前のお前。 年は四一歳。毎日うだうだと生きているよな。 俺はお前だから良く覚えている。 麗子と別れるまでは少しは人に自慢出来る、ましな人生だったのにな。 失恋を引き摺っちまったな。 まだまだ引き摺るぞ。 それで、出世街道を外れ、先細りの寂しい人生になる。 お前が麗子の浮気を疑って。麗子は一回りも年下だったんだぞ。 大人であるべきお前が男のプライドなんて青臭いことを言って麗子と別れなければ、お前の人生は薔薇色だったんだ。 この阿保たれが。どれだけ後悔したことか。 麗子はお前にとってそれ程大きな存在だったんだよ。 麗子の浮気な。あれはデートしただけだ。 お前の独占欲が強すぎて、嫌気が差した麗子のほんの出来心だった。 お前への気持ちは変わっていなかった。嘘じゃないぞ。 麗子は自分からデートしようなんて思ってもなかった。 猛烈に言い寄る男がいてな。 誰だって愛してるって言われて、優しくされて、悪い気をする奴なんていやしない。 その時のお前は麗子を束縛して、優しいことも言わない。 お前へのアピールもあって、その男の誘いに乗った。 私に優しくしないと、他の男のものになっちゃうわよってな。 そんなことにも気付かぬ阿保男が。 麗子はその男とくっついた。だがな、その男は最低な悪党だったんだよ。 名前を辰夫って言ってな。すぐに麗子のひもだよ。 麗子は素直な娘だったからな、暴力も振るわれたんだろう。 水商売や、風俗で働けるだけ働かされて、最後にゃ麗子を保証人にして、闇金から借金をしてて姿を暗ました。 麗子は借金の返済の為にソープで働かされた。身も心もぼろぼろにされてな。 耐えられなった麗子は闇金から逃げた。 ネットカフェから俺にメールを寄越した。これまでのいきさつを書いて、助けてってな。 誰も頼る人がいなかったんだろうな。昔の恋人の健一しかな。可哀そうな麗子。 間が悪い時ってあるんだよ。その時、俺は泊りの出張でメールを見ることが出来なかった。 二日後にニュースで麗子の死を知った。階段の下で死んでいた。 麗子は闇金に見付かって、必死に逃げる時に足を踏み外し階段から落ちて死んでしまったんだろうと思った。
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