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俺は警察にメールを見せて闇金を訴えた。
親御さんも連絡を取らなかった自分達のせいだと悔やんでいた。
こんな悲惨な人生があるか。
お前のこれからの人生も悲惨だが麗子と比べようも無い。
別れてからの麗子の人生を知って愕然としたよ。
みんな俺のせいだってな。本当に悲しかった。
だから麗子の人生をやり直させてやるって自分に誓ったんだ。
死んでしまった人間の人生をやり直させる方法なんて絶対無い。分かっていた。
だがあきらめ切れない。だから強く祈ることにした。
お前の未来の健一、俺は計算すれば九十一歳。
俺はとっくに死んでいる。俺は今冥界にいる。
この世界でようやく、俺の麗子への執念が認められた。
俺は死ぬまで、死んでからも麗子のことだけを願い、祈った。
やっとこの世界の絶対なる存在に思いが通じた。
特別に麗子の人生を変えることを許された。
だから死んだ麗子の人生をやり直させることが出来る。ついでにお前の人生も変わる。
お前が信じようと、信じまいと関係無い。
お前にはやってもらわなければならないことがある。
その指示をする為にしばらくして、お前に俺の姿を見せる。
俺が死んだ時の姿だ。お前より老けているがお前の姿だ。
実態は無い。ただ見えるだけだ。
お前が驚かないように、予備知識を与える為にメールしておく。よく理解しておけ。
お前と俺とのコミュニケーション手段は、筆談か霊波を電波に変換出来るメールしか無い。パソコンを開けておけ。
メールを読み終わって健一は混乱していた。大混乱だ。
「何だ、このメールは」
思わず声に出た。
未来の自分が現われる。
そんなことが有る筈は無いと思いつつ、健一はパニック気味の心を抑え、当たりを見回した。誰もいない。
健一は何度もメールを読み直した。
読むほどに現実感が増して来る。
麗子と別れた経緯もそうだ。
自分の心の葛藤も。
健一はこれを現実として受け入れることにした。
その位の柔軟性はある。
そう心に決めた時、突然眼の前に健一に似た顔の男が現われた。
「あんたが俺の未来か」
未来の健一はパソコンを指さした。
健一はノンタイトルのメールを開いた。
[そうだ。お前と同じ顔だろう]
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