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[あなたは何も分かっていない。少しでもあなたへの気持ちが残っていると思ってた? あなたに捨てられた時が一番の不幸だったのよ。それを辰夫が癒してくれた。だから今の麗子は幸せなの]
[辰夫はお前を愛してなんかいないんだぞ。お前を食い物にする為にお前を手懐けたんだ]
[そんなこと、死ぬ時には良く分かってた。だから幽霊になって辰夫に取り憑いて、徹底的に苦しめた。私に心から許しを乞うた。だから許した。今はどうしているのか知らない。だけど、辰夫と同じ位、健一が憎かった]
[俺はお前を不幸にした自分が許せなかった。だから幸せにしたかった。自己満足かもしれないが。だから麗子がしたいようにしていい]
[あなたが死ぬまで苦しんでくれたことは聞きました。だからあなたへの恨みは消えました。こちらに来てあなたとの深い縁を知りました。これから冥界で霊としてあなたと一体になりたい。でも今の健一はまだ許せない。このまま行けばあなたになる。あなたのように苦しんでから、霊で私と結ばれる。辰夫は十分苦しんで、私から報いを受けた。今の麗子は辰夫と一緒に生きるのが幸せ。だから、麗子を幸せにするよう辰夫の心を変えて。お願い]
[分かった、そうしよう。お前も納得しろよ、健一。麗子にはうまく言ってくれ]
(そんなに麗子ににくまれていたとはな。麗子を諦めるなんて出来ないけど、これが報いか。納得したく無いけど、冥界で麗子と一緒になれるならいいか。ちょっと待てよ)
健一は何か考えるように言葉を切った。
(何かおかしい。今の麗子は辰夫と幸せな人生を送るんだろ。だったら麗子の未来は変わる。そうしたら未来の麗子も変わる。ここにいる未来の麗子はいなくなる。そうなったら俺は麗子と一緒になれない。違うか?)
[さすが俺だ、良く気が付いた。そうなるんだったら、俺は麗子を離しはしない。俺とお前、今と未来の麗子。同じ人間だが、今違う人間として会っている。性格も少し違って同じ人間には思えないがな。俺達はお互いを違う人格だと認識している。その時、人間としては同一だが、霊格は別になる。だから死んでもお前は俺にならないし、麗子も別々だ。しっかりと勉強して来たから間違い無い]
[そうなの。だったら今の健一が可哀そう]
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