第1話

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 ”猫パンチ”という必殺技があることを  ご存知の読者も多いことだろう。  近頃、”ひゃくれつなんとか”  という技の使い手も現れたらしいが、詳しくは知らない。  私はこれまで数多の猫パンチの使い手達と戦ってきたが、  未だに勝負の決着をみたことがない。  それは何故か?  それは、皆、  戦いの途中で飽きてしまい、  どこかよそへ行ってしまうからなのだ。    およそ戦いはむこうからしかけてくる。  こちらは、気分がのらない上に面倒くさくて  相手にしたくない。  しつこくくるので、仕方なく相手になると  いつもこの仕打ち。  もう、次は相手にしないからな。  いつもそう思うのである。        先日、ある知人が私にこう尋ねた。  「あなたは、猫派?それとも犬派?」  間をもちかねて、  なんとなくそんな話題を口にすることもあるだろう。  なんとなく、  「猫と犬、どっちが好きですか?」  と、聞いてみた。  そんな感じで。    ところがこの知人は、自分自身の心は勿論、  他人の心も、   世の中の事共みな全て、きちんと線を引いて、  仕分け、分類できるものと思い込んでいるらしい。  羨ましい様な気もするが、  やはり、とても哀れな人だと思う。  確かに、犬が苦手で、猫が大好きな人。  その逆で、猫が苦手で、犬が大好きな人。  そんな人達なら、  迷わずに返答できるかも知れない。      だが、私は返答に困ってしまった。  「どちらでもありませんよ。」  私がそう答えると、知人は、落胆の色を隠さずに  「そんなことは、ないでしょう・・・?」  そう言ったのだ。  私は現在、猫を飼っていて、犬を飼っていない。  知人はそのことを知っていて、答えを聞く前から  私のことを、猫派であると決め付けていて、    そう答えると決め付けていたのだろう。
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