1章

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――― 「寿 沙織」。 何で、私はこんな名前なのだろうか。 その時、隣の部屋からドアを閉める音がして、私は振り向いた。 右側、お隣さんの船橋 みどりさん。 化粧の綺麗な中年女性。彼女は廊下に立つ私に気づいた。 ガチャリと鍵を閉めながら、私を見た。私はこのところ彼女にお世話になっている。 「あら、おはようさん、沙織ちゃん」 私は笑顔を向けてくれた彼女に笑顔を返した。 「おはようございます」 彼女は、どうやらゴミ袋を出しに出てきたよう。 「朝も涼しいなったね」 彼女はまた笑った。 「えぇ」 私はバッグを肩に掛け直す。 「ところで沙織ちゃん」 「はい…」 声のトーンを下げて、彼女は近づいてきた。神妙な面持ちになった彼女に、私は合わせる。 「そこ、沙織ちゃんの部屋のお隣さん」 「はい」 「えらい、変な人が入らはったんよ?」 「変な人…ですか?」
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