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――雪、降ってる?
白い紙に書かれた、女の子らしい丸い文字。
「降ってないよ」
――残念
彼女は少し寂しそうだ。
「降りそうなんだけどな」
窓の外は今にも泣き出しそうな雰囲気だが、降りそうな気配は今はない。
――先生、雪、降ったら少しは外に行ってもいい?
「屋上ならな。……ただし俺と一緒に」
――やった、嬉しい。
彼女が笑った。ついこの間まで子供だったと思っていた。それがいつの間にか女の子になって、そして女性へと変わろうとしている。でも、彼女の先は長くはない。
――先生
ちょこんと彼女が袖を引っ張る。綺麗な笑みを浮かべて、彼女が笑う。
彼女を救いたくて医者になったのに、人間は――俺はなんて無力なのだろう。
――先生
「なんだ?」
――大ちゃん
自分のあだ名を呼んだ彼女が女の顔をしている。彼女は再び袖を引っ張ると、ほのかに頬を染めて唇を動かした。
『大ちゃんが、だいすき』
もう何度目の告白だろうか。
『だいすき』
今まで一度もそれに応えたことはない。
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